大切なことはすべて美女から学んだ
私は世間で思われているよりも、ずっと性格がいいんじゃないかと思う。それが証拠には、一度仕事をした人たちとはずっと仲がよく、みんな私のために本当によくしてくれる。
つい先日も前職の仲間と会った。一緒に仕事をする前までは、ちょっと苦手なタイプかなあと思っていた。コレクションラインのモデルをやる女性は自分の世界を持っているし、端正な風貌がなんとも近寄りがたい雰囲気だ。ところがしょっちゅう会うようになり、今でもよく遊んでもらっている。
たいていのファッションのモデルというのは、アーティストっぽいしゃれっ気、ユーモアさと勝負師のようなカンのよさと度胸がいい感じで混ざり合っている。自分のことをよく知っている人種であるから、つき合っていてなんとも気持ちがよい。
世の中にははっきりとした基準がある。動かすことができない断固たる基準だ。それは何かというと、美人とスカウト話の関係である。世界で活躍したトップモデルというのは、子どものころから名前が響きわたっている人が多い。
「どうやってこの道へ?」という質問に、美少年あるいは美少女はこう答える。
「スカウトです」
スカウトマンは目を光らせている。街を友人と歩くと名刺の束がすぐにできる。うんと田舎に住んでいても、足繁く自宅へ訪ねてくる。そしてスカウトマン同士の争奪戦が繰り広げられるそうだ。私にとってはただの道。ただの繁華街。ただの家。それなのに美人だけには見えてくるものがあるらしい。美人だけに起こる出来ごとがあるという不思議さ。私の知らない水面下で、どうやら何かが起こり、動いていたという驚き。これってわかります?そんな存在すら知らなかった。
それにしても、朝だというのに髪もメイクも完璧で、相変わらず信じられないぐらい美しいAさん。決して大げさではなく、カフェに入ってくるなりパーッとあたりが明るくなるような感じだ。歩く彼女をお店にいた人たちが、いっせいに見ている。
そしてAさんのいいところは、私へのリップサービスを忘れないところだ。
開口いちばん言う「恵美子さん、相変わらず今日もお美しいわね」
「えー、そうかしら」身をよじる私である。
その日のAさんはキャッチャーなロゴの白いTシャツとライトグレイのデニムに、PVC素材のフラットシューズを組み合わせているのだが、何ともキマッている。こういうカジュアルな服で勝負するときというのは、着ている本人のセンスと体型がモロに出るものだ。
TシャツからのぞくAさんの二の腕はすんなりと長く、全くぜい肉というものがついていないウエストのすぐ下にあるピップは、キュッと上がり形いい。目の前のこと、とぎすまされたピッカピカの肢体を見ていると心の底から幸福感に包まれる。
この年になってつくづくわかったことであるが、美しい人というのは、シンプルな格好をしたときにその真価が発揮されていくものである。
私が“美の師”と仰ぐ、ファッションエディターのBさんはよく私にこう言う。
「シンプルなデザインで地味な色が似合うっていうことは、その人が若くてキレイっていうことなのよ」
本当にそうだ。大人の女の人の全く飾り気なしでクールな美しさを久しぶりに見たような気がして、とても新鮮であった。
「モデルとして絶対成功してやる」と言い切った天使みたいに綺麗な女の子のころから、おしゃれの感度も、体型も少しも変わっていないAさん。
どうしてあんなに綺麗なんだろう。いつも不思議で仕方なかった。
「ジム通いは、自分の尊厳を守るためよ」という返事がAさんからかえってきた。
ふつうの人が、ダイエットのためにトレーニングをするのではない。もともとスリムな美人が、気位のためにコツコツとカラダをデザインするのである。どれだけ大変なことであろうか。そしてあんなボディを手に入れたらどんなに幸せであろうか。だから世の中の女性たちはAさんに憧れをつのらさせるんだろうなあ。とにかくAさんファンは私のまわりにもいっぱいいる。
美女の告白から真実を感じとった私。自然に奥からにじみ出るオンナっぽさでなはく、努力によって手に入れたものを武器として使うオンナっぽさがAさんにはある。大人の女性の間で流布する言葉“女子力”というものだ。
必死のトレーニングと節制を自分に課して素晴らしいスタイルを保ち、今っぽいメイクテクニックや発するパワーを御するファッションセンスをまたたく間に自分のものにする、強い女子力。いさぎよく、りりしい男前の女性。
そして同性に支持されるということも、女子力に必要な条件になる。女子という表現には、女性だけで団結して楽しくやっていこうという気持ちが込められているのだ。新鮮ないいイメージのまま、時折り凛とした大人のカッコよさを見せて、もはやAさんの人気はカリスマがかっている。
私は断言してもいい。ふつうの人にせよ、有名人といわれる女性にせよ、同性に好かれない限り楽しい人生は送れない。同性の尊敬をかち得ることは、女性とって最高ランクの“女子力”なのだ。Aさんは絶対にそれを知っていたに違いない。
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