美しさのまとい方 女性の脳とホルモン療法

閉経期からそれ以降にホルモンを補充するのはいいことなのか、悪いことなのか。女性たちは知りたがっている。私の脳はエストロゲンの消滅に適応できるのか。ホルモン療法を受けないと私の脳細胞は守られないのだろうか。


エストロゲンが脳細胞の生存、成長、再生を促進させることは研究で明らかだ。また女性に関する別の研究でも、加齢の途上でエストロゲンが神経細胞の成長と脳の機能維持に多くの好影響を及ぼすことがわかっている。


これらの研究では閉経後のホルモン療法を受けた女性と受けなかった女性を、脳の画像を撮影して調べているが、ホルモン療法を受けている女性は以下の領域で通常の加齢にともなう萎縮が回避されるというー前頭前皮質(意思決定と判断の場)、頭頂葉皮質(言語処理と聴覚機能の場)、側頭葉(ある種の感情処理の場)。

このような前向きな研究成果からして、多くの科学者は現在、ホルモン療法は加齢による衰えから脳を守る効果があると考えるべきだと見ている。


ところが、閉経直後の51歳くらいからホルモンを摂取した女性について、エストロゲン療法が脳に及ぼす効果を調べた長期的な研究がないことに留意するべきである。2005年にはじまったKEEPS(The Kronos Early Estrogen Prevention Study)は、エール大学が閉経期の42歳から58歳までの女性についてホルモン療法の効果を調べようとしているもので、結果が出るのはもうすこし先になる。


それまで、わたしたちが決断するのに役立つ情報は他にどんなものがあるだろうか。

ホルモン療法を評価したものとしては、BLSA(Baltimore Longitudinal Study of Aging)がある。1958年にアメリカではじまった人間の老化に関する最も長期にわたる研究で、ホルモン療法が脳に多くの好影響を与えることを明らかにしている。

この研究によれば、ホルモン療法を受けた女性は視床下部やその他の言語記憶にかかわる脳の領域の血流が大きく増加した。またこれらの女性は言語記憶や視覚記憶を調べるテストでも、ホルモン療法を受けたことのない女性より高得点をとった。またホルモン療法は(プロゲステロンを含むものも含まないものも)脳組織の構造を保護し、加齢にともなう通常の萎縮を防ぐ効果があった。


男女の脳の領域のなかには、幼いころの成長の度合いが違うように、比較的老いが早い部分と遅い部分がある。加齢によって男性の脳は女性より早く萎縮することもわかっている。とくに海馬や意思決定の速度を上げる前頭葉の白質、顔の認識にかかわる紡錘状回などでその傾向が強い。

エストロゲン療法を受けている閉経後の女性はうつや怒りが少なく、言語能力や聴覚機能、作業記憶などを検査すると、エストロゲンを摂取していない閉経後の女性よりも優れていること、また男性よりも優れていることがわかった。さらにホルモン療法の時期が長いほど、灰白質あるいは脳細胞の容量が大きいことがわかった。


子宮摘出直後からエストロゲン補充療法を受けた健康な45歳の女性たちの場合、言語記憶が守られる効果があることが証明されている。しかし手術による閉経が起こってから何年もたった年配の女性には効果は見られなかった。これらの結果からすると、閉経後にエストロゲン補充療法をはじめる重要なタイミングというものがあるようだ。


アルツハイマー病は50歳までは発症率に男女差はないが、女性の場合、閉経を迎える50歳以降に急に多くなる。女性のアルツハイマー病の罹患率が男性の約2倍になるのは、おそらく、女性が男性よりも早期にエストロゲン分泌が低下することも関係しているのだろう。最近の研究の積み重ねによって、閉経後5年以内にエストロゲン補充療法を10年以上行うと、アルツハイマー病のリスクは30~40%低下することが認められた。予防または進行を遅らせるということに関してはある程度期待がもてそうだ。


ここで注意しておきたいこととして、閉経後10年以上経過し、高血圧や高コレステロール血症などがあり、動脈硬化が進行している女性にエストロゲンを投与すると、むしろ脳卒中などを助長するおそれがあり、二次的に認知症を増やすこともありうる。60歳を過ぎてからアルツハイマー予防目的で、ホルモン補充療法を新たに開始することは勧められない。




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