美容の皮膚科学 シミ
<メラニン>
メラニンとは微細な黄褐色の顆粒で一種のたんぱく質である。それがたくさん群がってくると黒くみえる。またメラニンのある場所によって、皮膚に違った色を与える。皮膚の表面に近いほど、褐色調が強いが、その量が多いと黒褐色、あるいは黒色になってくる。
皮膚でメラニンがつくられるのは色素細胞(メラノサイト)で、表皮と真皮の境界線上で基底細胞の間にある。星芒状をしたもので長い足を出している。これは神経節に由来する細胞で、このためメラニン形成は精神的因子に左右されることが多い。色の黒い人では、有棘層でもメラニンが認められる。
メラニンは、この細胞にチロシナーゼという酵素があってチロジンがつくられメラニンを形成する。また、下垂体から分泌される色素細胞刺激ホルモン(MSH)もメラニン形成を促進する。紫外線にあたると、この色素細胞の働きが盛んになってくる。日光にあたって色が黒くなるのはこのためである。
<メラニンの排出>
メラニンは色素細胞で新しくつくられる一方、いろいろな道を通って体外に排出される。
メラニンが排出される道には2つのものが区別される。
1つは次第に皮膚の表面に向かって押し上げられて、角質とともに皮膚の表面から落ちていく。この間にメラニンは還元されて白色メラニンになっていく。そのため有棘層の下層では、黄褐色のメラニンがみられるが皮膚の表面に近づくにつれて認められなくなる。ところが強い日光にあたるとメラニンの色がより黒くなる上に白色メラニンが再び酸化されて黒色メラニンにかえる。日光に長くあたった直後に皮膚の色が黒くなるのはこのためである。
もう一つは真皮の方に転落していくもので、それを真皮、特に乳頭層から乳頭下層にかけての細胞で自分の中に取り入れているものがある。それは大きな細胞で中に褐色、あるいは黒褐色のメラニンの塊りを含んでいる。これらのメラニンは血管あるいはリンパ管を通して体外に排出されていく。
<シミができる原因>
①日光にあたったあとにできる
海水浴などで強い紫外線を受けてできることがある。治療でよくなっても、日光にあたるとまた目立ってくる。特に40代以降生じてくる老人性のシミは長年にわたって紫外線を浴び続けてきた証拠のようなものである。
地上に届く紫外線はUVB(280~320nm)とUVA(320~400nm)に分かれUVAは約95%を占める。UVBは皮膚に対する刺激が強く、急激な作用で紅斑を起こし、数日後には色が黒くなる。ビタミンDの前駆物質をビタミンDに変えるのもUVBの働きである。また真皮まで達したUVBは細胞内のDNAに損傷を与えてそれが皮膚癌へとつながる可能性もある。
紫外線UVA(320~400nm)を波長の短い部分と長い部分とに分け、それぞれショートUVAとロングUVAと呼ぶことがある。ショートUVA (UVA2)は波長が近いため真皮層まで届かず、メラニン色素を濃くしてシミなどの色素沈着の原因となる。一方、ロングUVA(UVA1)は地上に届く全紫外線の約75%を占めており、真皮層まで届き酸化ストレスを与えたり、コラーゲンやヒアルロン酸の劣化を促進させる作用がある物質の産生を促進する。つまり、紫外線によるシミを効果的に防ぐにはショートUVAを、シワやたるみを防ぐにはロングUVAを防御しなければならない。またUVAは1年を通して変化が少ない。
②大気汚染の影響でできる
「PM」とはある特定の物質ではなくparticular matterの略で微粒子を意味しPM2.5は、粒径2.5μm以下の非常に小さな物質のことを指す(1μm=0.001mm)。大気汚染物質の大きさの目安はタバコの煙は0.3μm、花粉は30μmである。角層細胞は花粉とほぼ同じ大きさの直径約30μmであるため、それより小さい大気汚染物質は細胞と細胞の間から肌内部に入り込む。大気汚染物質の粒子の大きさは皮膚に浸透する速度と影響度に直接関係し、特に10μm以下のものは要注意である。
大気汚染物質が皮膚に付着すると炎症が起こる。炎症が起こった表皮では角化の速度が異常に早まって、核が残ったままの不全角化が起こる。このような皮膚は保湿力とバリア機能の低下がみられシミが発現する。
③卵巣の働きが悪いとできる
中年以降の女性に多いのがこのためである。エストロゲンは皮膚のコラーゲン、ヒアルロン酸、水分量を保持する作用がある。閉経または人工的に卵巣の働きを抑制すると皮膚の厚みが減じ、乾燥し弾力性も失われる。このような皮膚は日光に対して敏感になってくる。
④副腎皮質機能低下でできる
色素細胞は神経系性のもので、精神的影響を受けやすいことも理解できる。疲れやすい人にシミが多いのも、この副腎皮質の働きの弱い人といえる。また不満があってイライラしていてもシミはできやすい。
⑤妊娠すると起こる
特に妊娠1~2ヵ月目に目立ってくる人はよくみる。これは分娩後2、3ヵ月すると自然に消えていくので、多くの場合に長く残ることはない。なかには妊娠のたびに繰り返している人がいる。そうなると分娩後消えなくなるので、そういった人はそれが早く引くように手当てで努力することが望ましい。
⑥食物、薬品の影響でできる
人工甘味料、抗ヒスタミン剤、抗生物質など多く使われているものをはじめ、スルファミンなど古くから使われているものは皮膚を日光に過敏にするものである。そういったものは皮膚の色素沈着の助けになっている。
いずれにしても、シミは1つの原因でできるものではなく、いろいろな成因がありそれらが単独に、あるいは2つ以上組み合わさって起こる。
<スキンケア>
①サンスクリーン剤
主なサンスクリーン成分は2種類ある。1つは紫外線のエネルギーを吸収して別のエネルギーへ変換さることで皮膚への影響を抑える紫外線吸収剤がある。これは皮膚に塗布したとき白浮きせずにきしみ感がないのが特徴である。まれにアレルギー反応を起こす人もいる。
もう一つは微粒子粉体が紫外線を反射させる紫外線散乱剤がある。皮膚に塗布したときにカサついたリ、白くなるのはこの粉体の成分のためである。かぶれなどの症状が起こりにくいので敏感肌の人によい。散乱剤のみを使用した商品はノンケミカル処方と表示されている。
紫外線吸収剤はポジティブリスト(医薬品医療機器等法の定める配合可能成分リストのこと)対象成分ある。「使えるのはこの成分」で且つ「使う量を制限する」という規定がある。それをポジティブリストに収載するためには、11種もの安全性データと体内に入った時にどのような挙動を示すかのデータなど、膨大な実験によるデータが必要となる。これらのデータを基に専門機関が時間をかけて安全性の審査した後、問題がなければ厚生労働大臣により承認されるという流れのため、大変なコストと時間のかかる作業になる。
つまり紫外線吸収剤は安全性に対して十分に検討を行なわれた成分ということであり、一方、紫外線散乱剤については自由に配合することができるため、新しい成分をすぐに使うことができる。
②内側からの手当て
強い日光を受けることは皮膚に害がある。このときやけどと同じで皮膚は荒らされる。コラーゲン、エラスチンの配列を乱されるためで、繰り返されているうちに早くに皮膚の衰えを招く。そこで皮膚の日光に対する抵抗力を強めて、荒らした後それを早く修復するようにつとめることが美容上大切である。食物はたんぱく質を多く含むものを摂るとよい。日光を受けた皮膚はサンバーン(日光によるやけど)を早く戻すために身体全身からたんぱく質が動員されて、そこに送られてくる。そのため体の無駄な消耗を招くことになる。一日海水浴に行って肌を焼いて帰ると体が疲れるのはこのためである。特に牛肉、肝(レバー)、腎(キドニィ)などのモツがよい。
その他ビタミンB₂、ナイアシン、ビタミンCなども荒れた皮膚を修復する働きがあるとともに、日焼けの後のメラニン増加を予防する働きがある。ただし日焼けする1ヵ月位前から摂取ることが大切である。
人はストレス状態になると体に熱が溜まる。つまり炎症が起きる。炎症はシミを発現させるだけでなく、老化の速度を早める。熱は体の上半身、体幹中で背中に溜まりやすい。
主な症状としてはシミ以外に頭痛、目の充血、湿疹、ニキビ、首コリ、肩こり、背中の痛み、暴飲暴食、イライラ、多弁になるなどがある。
こちらは体の上部に溜まった熱を冷まし下へおろす作用があるハーブ
生活の木 #カモマイル ジャーマン
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