エストロゲンと女性の魅力
【エストロゲンの見えざる指示】
世間一般的にはウエストが細く、乳房が発達していることは若い女性の魅力の指標になっている。このような体型の女性では、エストロゲンの分泌が活発で排卵時のエストロゲン値が高いという研究がある。体型以外にも、異性から見た女性の魅力にはエストロゲンが深く関わっている。
例えば我々は声によって男か女かを識別できるが、声の質もエストロゲンと男性ホルモンの比率に影響されている。また女性らしい行動や立ち居振る舞いも、異性にとっての魅力となるが、こうした女性らしさは胎児期に男性ホルモンの曝露を免れたことで女性型の脳に分化したことによるものである。
そして異性同士を引き合わせる主役を演じているのがエストロゲンである。我々の社会的行動への動機、価値基準、人生観などの底流には異性との接触という本能や欲望が少なからず関係しており、ヒトを含む動物はおしなべてエストロゲンの見えざる指示によって動かされている。
【女性の外見的魅力の仕掛けは生殖能力の反映】
男性から見た女性の体型に関する魅力のひとつに、前述のようにウエストとヒップの比率が小さい体型(ウエストがくびれている)、またはそのような体型の女性の歩き方などがある。体重は標準であっても、太ももや腰周りの皮下に脂肪が蓄積するとウエストが細くヒップが大きくなる。このような女性特有の脂肪分布は、エストロゲンが十分に作用していることの表れである。言い換えれば月経が規則的にみられ排卵が周期的に起こっているという間接的な証拠であり、子育てに適した身体ということを異性にアピールするという解釈もできる。
一方エストロゲン作用が相対的に低下すると、内臓周期に脂肪がつきやすくなり、ウエストは太めとなり体重が過多となる傾向がある。このような女性では、月経や排卵が不規則または消失することがあり、妊娠しにくいこともある。また減食などによりエストロゲンが極端に低下すると体重は減少し身体全体の脂肪量が減少し、女性らしい体型とは言い難くなる。この場合は、しばしば無月経となり妊娠がしづらくなる。
【男女の結びつきは性ホルモンに操られたもの】
エストロゲンと男性ホルモンは、それぞれが女性、男性を象徴するホルモンといわれる物質である。エストロゲンが高い女性は生殖能力が比較的高く、しかもテストステロンが高めの男性を好む傾向がある。
エストロゲンがピークとなる時期に容姿、振る舞い、あるいは声が異性にとって最も魅力的になる。また女性が排卵にさしかかるとテストステロンが十分に作用している男性的な顔貌、体型、声などが備わった男性に対して興味を寄せる。
また排卵の時期には、視覚刺激以外に嗅覚も変化する。男性の汗に含まれる臭いであるアンドロステノンという物質があるが、これはテストステロンから作られフェロモンの一種でありあまりよい臭いではないが、排卵が近い女性には心地よい臭いと感じられる。また男性側からは、排卵時期の女性の体臭が最も心地よく感じられる。
このように排卵前のエストロゲン優位な時期に、男女ともお互いに接近しやすい状態となる。なお排卵がすぎると、エストロゲンとともに黄体ホルモンが分泌される。後者はエストロゲンの作用を打ち消すように作用する。
【エストロゲンの作用を打ち消す理性と本能】
経口避妊薬はエストロゲンと黄体ホルモン製剤の合剤であるが、それを使用している女性では、自然な状態でみられる排卵直前のエストロゲンのみが急に血中濃度が高まるという時期がなくなる。そのため経口避妊薬を服用している女性では、特定の時期に男らしい男性に魅かれるということは消失する。
さらに生物一般にいえることであるが、近親での妊娠を避ける本能がある。ヒトでも排卵期にある女性では、異性であるが近親でもある父親に対しては、それ以外の時期とは異なった反応を示す。このような女性の反応も、エストロゲンが関与している。
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