美しさのまとい方 骨へのエストロゲンの作用

【骨の成長を促すのも止めるのもエストロゲン】

思春期は男女とも身長が急に伸びる時期でもある(スパーク)。身長が伸びるということは骨が成長することである。思春期が開始するころの低濃度のエストロゲンは、下垂体から分泌される成長ホルモンの分泌を刺激して骨を伸長させる。以前は、エストロゲン(性成熟期にある女性にみられる程度の濃度)はもっぱら成長ホルモンの分泌を抑え、身長の伸びを抑えるように作用すると理解されていた。しかし低濃度のエストロゲンは、むしろ成長ホルモンの分泌を増加させることが明らかになった。一方、高い濃度のエストロゲンは成長ホルモン分泌を抑制する。思春期に身長が伸びるのは乳房が発育する前であり、乳房の発育を起こさせない程度の低い濃度のエストロゲンが成長ホルモン分泌を刺激するのである。

成長ホルモン以外に、肝臓で作られるインスリン様増殖因子(成長因子の一種)も成長に関与する。この物質は成長ホルモンにより産生が刺激される。さらにエストロゲンも直接インスリン様増殖因子の産生を促している。


【エストロゲンは骨のカルシウムを増やす】

ヒトにとって、骨は身体を支え、脳や内臓などの重要臓器を保護し、あるいは運動や移動のために必要である。これらは物理的な機能である。さらに骨の内部では骨髄が造血工場にあたる働きをしながら、生命維持に欠かせないカルシウムの貯蔵と、必要に応じて全身にカルシウムを供給する機能を合わせもっている。骨には全身に存在するカルシウムの約99%が蓄えられている。

通常の状態では、骨は一方では破壊されて(骨吸収)カルシウムが血中に放出され、他方では骨は新たに作られる(骨形成)というように相反する現象が同時に進行し、巧妙なバランスをとっている。なお、骨吸収に関わる細胞は破骨細胞、骨形成に関わる細胞は骨芽細胞である。エストロゲンは破骨細胞の活動を抑えることで骨吸収を抑制し、骨芽細胞を活性化することで骨形成を促進する。この結果、骨のミネラル含量(骨量)が増える。骨に含まれるミネラルの大部分はカルシウムである。

個体の維持のみならず、産む性であるメスはオスよりもカルシウムの確実な蓄えが要求される。妊娠、授乳には、カルシウムの必要量が高まるため、あらかじめ十分な貯蔵が必要となる。思春期を迎えると、女性は子供をつくる準備状態を整える。思春期にエストロゲンの分泌が開始すると、骨は急に成長して初経を迎え、その後成長は止まる。一方、初経以降エストロゲンの作用で骨のカルシウム含量(骨量)は増加する。これによって、将来の妊娠に備えることになる。このため女性は一般に、その身体のサイズや筋肉の量に比べて骨のカルシウム含量が男性よりも多い。


【妊娠・授乳中のエストロゲンの至妙な業】

妊娠中は、非妊時の50%程度カルシウムの必要量が増す。これは胎児の骨格の発育などに利用されるからである。また、妊娠中は腸からのカルシウム吸収を高める作用のあるビタミンDも非妊時の約3倍となる。その結果、母体の腸からのカルシウムの吸収効率は増加している。なおこの時期には、このビタミンDは胎盤でも作られる。

妊娠中はエストロゲンは胎盤で多量に産生されるが、骨を吸収する副甲状腺ホルモンも同時に分泌されるため、骨吸収も骨形成も亢進し、血中にカルシウムを放出しつつ骨のカルシウム量は維持されることになる。このような仕組みによって、胎児にカルシウムを安定的に供給している。

胎児にカルシウムを供給するメカニズムに関与する物質であるビタミンD、エストロゲン、甲状腺ホルモンなどは、胎児の付属物である胎盤から分泌されている。胎児は、これらの物質を通して母体に働きかけることで自ら発育している。

分娩後に授乳を行うと、カルシウムの必要量はさらに増し、非妊時の2倍近くになる。授乳期にはエストロゲンは低値となることで、骨の吸収が促進され、血中にカルシウムが移行しやすくする。血中のカルシウムは母乳へ移行し、児の成長に役立つ。なお、母親は授乳により骨量は減少するが、授乳を中止すると多くの場合、骨量は速やかに回復する。ちなみに、1年近くにわたる授乳を繰り返した女性は、閉経後に骨粗鬆症による骨折を起こすリスクが高まることがある。

妊娠、授乳中のエストロゲンは、子宮、胎児、乳腺などへの直接的な作用のみならず、骨を標的とした見事なカルシウムの出納の調整機能までを担当しつつ、胎児や新生児の発育に寄与しているといえる。

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