美しさのまとい方 エストロゲンと女性に多い疾患

【エストロゲンの変化と片頭痛】

片頭痛とは、発作性に起こる脈拍に一致した頭痛で、悪心、嘔吐などを伴うこともある。頭痛は左右いずれかのことが多く、光や音に対しても過敏となることがある。また、発作の前に目がチカチカすることや、視野異常などの前微がみられることもある。

片頭痛は若い女性によく起こり、男性の2~3倍の頻度といわれ、約8人に1人の女性が経験するといわれている。興味あることに、初経前の女性では片頭痛はあまりみられない。そのため、思春期前では男女差はない。つまり、片頭痛で悩む女性の多くは初経以降に症状が出現する。しかも約半数は月経に関連して起こることから、エストロゲンとの関連が指摘されている。

月経時にはエストロゲン分泌が最低となる。月経時ほどではないが、排卵に一致して片頭痛がみられることがある。排卵前にはエストロゲン分泌がピークとなり、排卵直前には一時的ではあるが急峻に下降する。つまり、月経時と同様にエストロゲン値の急激な低下があるという点で共通性がある。

さらに以下のことも、片頭痛とエストロゲンとの関連を示すものである。

月経時に片頭痛を経験する女性に、月経開始前にエストロゲンを投与し、エストロゲンの血中濃度を維持することで、片頭痛の発現を遅延させることができる。また、妊娠中は終始エストロゲンは高値となるため、片頭痛が改善・消失することが多い。月経時に片頭痛を経験している女性が妊娠すると、90%が妊娠時に軽快する。分娩後にはエストロゲンの産生源である胎盤が排出され、エストロゲンは急激に低下する。妊娠中におさまっていた片頭痛が、産後1ヵ月以内に再発することが多い。さらに、エストロゲンが漸減する更年期にある女性では、片頭痛が悪化するという報告もある。特に医学的な理由で、両側の卵巣を摘除したことにより閉経を迎える女性では、片頭痛の頻度が高いことが知られている。

片頭痛は大変悩ましいものであるが、それ自体重篤なものではない。しかし、最近、片頭痛を起こしやすい女性は、後に脳梗塞、脳内出血、心筋梗塞などの血管が関係する重大な疾患にかかりやすいという報告がある。片頭痛のなかで、特に目がチカチカする、視界の異常などの前微を伴うものが、将来脳卒中や心臓病の危険が高いといわれている。なお、男性のほうが重篤な疾患の頻度は高いが、女性と異なり片頭痛との関連は低い。


【エストロゲンの変化と胆石】

胆汁は、肝臓で作られて胆嚢や胆管に出され、脂肪の消化機能などを高める作用がある。胆石とは、胆汁中に含まれるビリルビンカルシウム、炭酸カルシウム、コレステロールなどが石のように固まり(結石)、胆嚢内や胆管内に留まっている状態である。最近は、コレステロール結石が多くみられる。

30~40代の年齢層では胆石は男性よりも女性が多い。その理由として、エストロゲンには血中にあるコレステロールを肝臓で胆汁中に移行させる作用があるからである。エストロゲンに加え、黄体ホルモンも胆嚢の収縮を抑えることで胆汁の排出を遅らせ、胆石の発生に関係するといわれている。妊娠中は、エストロゲンと黄体ホルモンともに分泌が亢進しており、胆石ができやすい状態にある。妊娠回数とともに、胆石の発生率も増加する。

経口避妊薬はエストロゲンを含んでおり、以前から胆石のリスクを高めるのではないかという指摘があった。しかしながら、現在使用されているものはエストロゲン含有が低い低用量ピルとよばれているもので、胆石の発生率にはほとんど影響しない。むしろ、肥満、脂肪の多い食事、メタボリックシンドロームなどが明らかな危険因子となっている。閉経後の女性にエストロゲンを投与すると、わずかではあるが胆石のリスクが高まる。


【エストロゲンの変化と腸の運動異常】

女性の排便の状態は月経と関連する。具体的には、一般に便は月経時に軟らかくなり、しかも回数が増える傾向がある。逆に、排卵してから月経までの間、すなわち、黄体期では黄体ホルモンの分泌が高まり、その影響で便は硬めとなる。妊娠は、いわば黄体期が延長した状態ともいえるものであり、妊婦はしばしば便秘を訴える。

下痢と便秘を繰り返し、腹痛を伴う疾患に過敏性腸症候群がある。腸には潰瘍、腫瘍、炎症などの病変がみつからない。比較的若い女性によくみられ、月経時に増悪することがある。女性の腸の運動や粘液分泌機能は、エストロゲンや黄体ホルモンにより影響を受ける。過敏性腸症候群では、これらのホルモンに対する感受性が異常に亢進している状態と考えられ、さらに、ストレスの影響も加わっている。

過敏性腸症候群以外に、クローン病や潰瘍性大腸炎という腸の炎症性疾患がある。これらの疾患に伴う腹痛や下痢も、月経周期と関連がある。クローン病は過敏性腸症候群と同様に月経時に増悪する。

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