美しさのまとい方 日内リズムの乱れとエストロゲン依存性がん

【夜間に分泌されるメラトニンは生殖機能を調節する】

ヒトを含む各動物では、精神活動や諸臓器の機能は1日において特有の変動をしている。このような日内変動は概日リズムとよばれ、体内時計によって支配されている。体内時計の中枢は、脳内の視床下部の一部にあたる視交叉上核である。ここでは、目の網膜で感じた明暗刺激を検知して、その情報を脳内の豆粒大の松果体という内分泌器官に伝える。松果体は明暗刺激に応じてメラトニンというホルモンを分泌し、生殖機能や免疫機能や情動などの調節、睡眠作用、抗炎症作用などに関わっている。

メラトニンは、光刺激がない夜間に分泌が亢進し、逆に日中は低くなる。生殖とメラトニンとの関連については、メラトニンは初経や閉経のタイミング、あるいは月経の周期などに影響を与えている。動物実験によるとメラトニンは卵巣を刺激する下垂体ホルモン(LH)やエストラジオールの分泌を抑え、排卵機構に影響している可能性がある。

メラトニンは、特に繁殖期に季節性がみられる動物で重要な役割を果たしている。動物たちの出産時期は餌が確保でき、子育てに適した気候となっている。出産時期から妊娠時期を逆算して繁殖期を決めている。そのため多くの動物にとって冬場は繁殖には向いていない。北半球では冬は日が短く、メラトニン分泌は高まり、メラトニンが発情の抑制に大きく寄与していると考えられている。

また、最近の研究では、メラトニンは酸化ストレスによる卵子や精子の劣化を防いでいるのではないかと推察されている。

なお、アメリカではメラトニンはサプリメントとして販売されており、不眠や時差ボケの改善という目的でしばしば用いられている。しかし、必ずしも効果に関する学術的裏付けや長期的服用による安全性の確認が得られておらず、そのため薬剤として承認されたものではない。


【メラトニンは乳がん、子宮体がんなどに抑制的に働く】

いくつかの研究で、メラトニンが低下する場合に、乳がんや子宮体がんのリスクが高まることを示している。メラトニンは、乳がんなどエストロゲンが関連するがんの発育を抑える効果があるとされている。この機序として、メラトニンは性中枢に作用して卵巣機能を抑制する、乳腺からエストロゲンの産生を低下させる、乳がん細胞に対してエストロゲンが作用しにくくすることなどが考えられる。

ある種のがん治療では、抗がん剤の単独よりもメラトニンを併用すると治療効果が高まるといわれている。またメラトニンは、抗がん剤の毒性を軽減するという成績もある。最近、抗がん剤の効果は、それを投与する時間帯によって異なるという説があるが、これはメラトニンの分泌状態と関連する話である。ただしメラトニンは、決してすべてのがんの万能薬ではなく、標準治療薬にもなっていない。また、メラトニンをサプリメントとして服用することが、がんの予防につながるというデータはない。


【夜勤は乳がんや子宮体がんのリスクを高めるのか】

メラトニンは夜間の睡眠中に分泌が高まる。一方、メラトニンには抗腫瘍効果がある。すると、睡眠時間とがんの罹患率とは関係するのではないかという疑問が生じる。これに関してはいろいろな報告があるが、多くの調査結果によると、十分睡眠をとる女性では乳がんの発生率が低下する傾向がある。また、メラトニン濃度が高い女性では、乳がんの発生率が低くなっていることが観察されている。

夜勤をする女性では一般にメラトニンが低下する。この理由として、夜勤の環境下では光刺激にさらされ、メラトニンが十分に分泌されないことも関係しているのだろう。夜勤をしている女性では乳がんや子宮体がんの頻度が若干高くなるという研究もある。

しかしこれらはきちんとした証拠がないため、夜勤のある女性が乳がんになっても、世界的には労災認定の対象とならない。


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