美しき群舞

私のまわりでいちばん華やかな美人なのは、やはりAちゃんであろう。お嬢さまの雰囲気をもちスタイルもバツグンだ。初めて見た人は、「わあー!」と声をあげたものである。


こんなに可愛いのに、男の人にあまりついていないそうだ。今、彼氏もいないという。

「私って男性に縁がない運命なんです」Aちゃんは深いため息をつく。

“運命”という言葉が、こんなに淋しく使われたのを聞いたことがなかった。私は昔からポリシーがある。一本筋が通っているのだ。“いい女”には徹底的に親切にするのである。

可愛い妹分の運命をこの地に埋もらせてなるものか。めぼしい男性のチェックにとりかかったのである。


その日から、以前ダンスの指導をしてくれたO君にメールで猛プッシュした。

端正さに憂いを含んだ正真正銘な美形。ゲラゲラ笑ったりしないし、表情をそうあらわにすることはない。折り目正しく、美しい日本語を喋り、下品なことはいっさい口にしない清潔な青年だ。モテる条件が全部そろっている。


私はびっくりした。本当に驚いた。こんな心清涼な人を見たことがなかったからだ。あのピッカピカの肢体とキレのあるダンスを維持するために、ものすごいストイックで努力家だろうとは想像していたが、それだけではない。自分にはものすごく厳しいが、他人にはこのうえなく優しく誠実な人だ。今回の食事会もこころよく承諾してくれた。


O君は友達ふたりを連れてくるということだったので、Aちゃんの他に「エロスの権化」と言われているBちゃんにも声をかけた。エロティックなことをいっぱい発言しても、あでやかな色っぽい女道を歩んでも、なぜか女の人から嫌われないこの人。それどころか女性たちの憧れをかきたてる。


「えー、合コン!あなたみたいな保護者の年齢の人は、行かない方がいいんじゃないの」

身内から忠告をうけたが、それを無視して妹分ふたりを連れてレストランへと向かう。

そしてそこには私の知らない世界が広がっていたのだ。


店内へ入り、彼らを見つけた私たちは、思わず後ずさりした。顔の美しさといい、脚の長さといい、ふつうの男性とまるで違っている。イケメンがずらりと並ぶとまるで後光が射しているみたい。とにかく店内の雰囲気を変えるぐらいの美男子なのである。そのうえおしゃれの感度も会話のセンスも、すべてが輝きを放っていた。


O君がつれてきたメンバーのひとりのあまりの可愛さに、一瞬声を失う私である。斜視ぎみのぬれぬれとした瞳に、ぷっくりとした涙ぶくろのオプションをもつ小さな顔は、妖精のようだ。無邪気にイタズラっぽく笑うその陰影は、まるで北欧の神話のようなワンシーンであった。


まず手はじめに瞳の色を確かめるかのように、こちらの目をじっと見る。自分がどんなに恋に向いている男性かというパフォーマンスを彼は示すわけである。

その気もない女性にも、ついこぼれ落ちてしまうこの愛らしさ。全身で好意を表現してくるいじらしさには文句のつけようがないではないか。女性陣はたやすく母性を揺り動かされ、ぐにゃりとなったのは言うまでもない。


そしてその隣に座っているのは、ものすごいフェロモンを発している青年であった。ちょっとしたしぐさ、視線、言動のセクシーで決まっていることといったら、年上の私でも頭がクラクラしそうなのだ。


最後に男性メンバーのひとりひとりが挨拶をする。

他の子たちは「今日はどうもありがとう。気をつけて帰ってね」といった調子なのであるが、彼は違う。ちょっと上目遣いになり、そして照れくさそうな無造作な口調でこう言う「今日のみんな、めちゃくちゃキレイだった…」


ヒィーッと女の子たちは絶叫をあげる。まだ若いのに、なんと女性の心を掴むのがうまいのであろうか。乱暴さと優しさの絶妙な加減がすごい。彼のこのひと言でいっきにこの場にいる女の子たちと一部のまあまあなおばさんを妄想の世界へと連れ込んだのである。


聞いてみると、彼らは学生時代からの大親友だそう。

そう、いい男というのは、群れをなしてこそさらに精彩を放つ。見た目がよいオスというのは、絶対にグループでいるべきなのだ。もちろん初老になってくると一人が素敵であるが、若いうちは違う。女の子だったら記憶にあることであろう、中学校、高校時代、あの男の子のグループにさんざん胸をかきみだされたことをだ。


人気や力のある男の子というのは、自然とツルむものである。秀才の男の子たちは教室の真ん中で固まり、スポーツマンの男の子たちはグランドで固まっていたものだ。マネージャーでもなんでもいい、あの男の子たちのグループに入りたいとどれほど熱望したであろうか。


美しい男性たちの群れを見ていると、あの甘酸っぱい記憶が甦ってくるのだ。

それは今の女の子にも共通した願いに違いない。願いとは、あるレベル以上の男の子の集まりに、自分だけ混ぜてもらう快感を味わうことだ。


そして、美しく生まれた男性は女性たちに非日常の甘い夢を与えなくてはならない。そのため並みの男性たちよりもはるかに素敵でカッコいいことが大切な条件である。


さてお食事会の帰り、興奮さめやらぬ私と友人たちはカフェで熱っぽく男性論を戦わせた。

女性の幸せというのは、たいていが男の人によってもたらされるものだ。

私の人生の横には、とうとうと流れる別の人生がある。それはとても華やかでとてもきらびやかなの。それが手に触れられる近さにくるのよ。傍に流れる川に触れてみたいと思う。

「ある日突然人生のスイッチが切り替わる」、それもひとつの生き方だと肯定できるほどたいていに女性は強いのである。


類希な美形は、世界を舞台にすっごいドラマティックな生き方を選ぶといっていい。とてつもない美しい男性に心から愛され、いとおしんでもらうロマンスというのは、かなりスリルにとんだわくわくするような出来事のはずだ。恋愛と青春をめいっぱい楽しんでいるっていう感じがする。だって自分は選ばれた女性で、この恋も選ばれたものなのだから。


全く男っ気がない女性に恋のチャンスは訪れない、などということは誰でも知っている真実だ。男性に心から愛され、いとおしんでもらうべき力。これは女性ばっかりでお酒を飲んでいてもつかないものである。本当にそう思う。




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