美しさのまとい方 睡眠障害(2)
【睡眠障害の診断と治療】
女性の睡眠障害の診断と治療の一般の流れにおいて、男性と大きな違いはない。治療としては、まずは睡眠障害対処を行い、改善が得られない場合に薬物療法を検討する。
睡眠障害対処12の指針
①睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
●睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
●歳をとると必要な睡眠時間は短くなる
②刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
●就寝4時間のカフェイン摂取、就寝前の1時間の喫煙は避ける
●軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング
③眠くなってから床に就く、就床時間にこだわりすぎない
●眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきが悪くなる
④同じ時刻に毎日起床
●早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
●日曜に遅くまで床に過ごすと、月曜の朝がつらくなる
⑤光の利用でよい睡眠
●目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
●夜は明るすぎない照明を
⑥規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
●朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
●運動習慣は熟睡を促進
⑦昼寝をするなら、15時前の20~30分
●長い昼寝はかえってぼんやりのもと
●夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響
⑧眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
●寝床で長く過ごし過ぎると熟睡感が減る
⑨睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のびくつき・むずむず感は要注意
●背景に睡眠の病気、専門治療が必要
⑩十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に
●長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
●車の運転に注意
⑪睡眠薬代わりの飲酒は不眠のもと
●睡眠薬代わりの飲酒は、不快睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる
⑫睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
●一定時刻に服用し就寝
●アルコールとの併用をしない
【女性の各ライフステージの治療】
思春期~更年期以前
黄体期になると心身の不調を呈する月経前症候群が30~80%の女性にみられる。この月経前不快気分障害の患者には睡眠障害が多く伴うことが報告されている。常識的に考えても、睡眠不足は気分障害につながりやすく、相互関係があることがわかる。月経前症候群の治療を行うことにより睡眠も改善することが多い。
成熟期
妊娠期間の最初の3カ月である妊娠前期には過眠がみられる。昼夜を問わず眠気が強くなり、1日の総睡眠時間は延長する。次の3カ月である妊娠中期には比較的安定することが多い。最後の3カ月の妊娠後期には、夜間の中途覚醒、日中の眠気の増加がみられる。このような場合には、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などの補剤が有効である。
産褥期
夜間睡眠が分断され、日中の眠気の増加、疲労感がみられる。産褥3~5日頃に多く発症するマタニティーブルーでは、涙もろくなる、気分が落ち込む、不安感、眠れないといった症状が出現するが、数日で自然消滅することが多い。数週間持続したり、再発したりする場合には産後うつ病が疑われるため、場合によっては専門医へコンサルトが必要である。第1選択は加味帰脾湯(かみきひとう)、帰脾湯(きひとう)である。
更年期
更年期女性の42~57%が不眠との報告がある。主に入眠困難、中途覚醒を訴える。ほてり・のぼせによる中途覚醒が多いのも特徴である。更年期には、ささいなことが気になる傾向があるので、睡眠へのこだわりが強く、不眠恐怖により症状が慢性化し、精神生理性不眠へと移行することもある。この場合は、更年期症候群の漢方治療もあわせて行う方がよい。
【睡眠障害の漢方治療】
①不安、決断できない、驚きやすい
♦酸棗仁湯(さんそうにんとう) 心身が疲れすぎて眠れない、多夢
♦帰脾湯(きひとう) 思慮過度、腹部軟弱
♦加味帰脾湯(かみきひとう) 精神不安、のぼせ、ほてり、胸苦しさ
②イライラが主体
♦抑肝散(よくかんさん) 興奮しやすい、筋肉の緊張
♦抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ) 神経過敏、軽い胸脇苦満、悪心、嘔吐、腹部膨満
③悪夢をよくみる
♦桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう) 多夢、動悸、冷え、腹部軟弱
♦柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) 多夢、イライラ、のぼせ、動悸、不安、抑うつ、胸脇苦満
④疲労が中心
♦補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 疲労困憊、倦怠感、食欲不振
♦清暑益気湯(せいしょえっきとう) 夏バテによる疲労、口渇、多汗、尿量減少
♦黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう) 身体虚弱で疲労、下痢、腹痛、寝汗
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