働く美女はがっつかない

「この外出自粛以降、すごく考え方が変わったんだ。家族ぐらい強い絆はないなあって本当に思うようになった。それで心から結婚したくなった」と彼は言う。

前からなんとなくいいなあ、と思っていた女性が最近結婚した。つまり、タッチの差で彼は無効となったのだ。

「だから誰か紹介してよ。お願いします。ホントに。もうわがままは言いませんから」


どうして今どきの男の人っていうのは積極性がないのかしら、よっぽど自分に自信があるのねとぷりぷりする私。

しかしとてもやさしい私は、彼に約束する。

「そうだね、やっぱり結婚した方がいいかもね。きっと私が探してあげる。女性の中にも今度のことで気持ちが変わった人がいるよ」

が、私には女性の持ち駒がない。「誰かいい人はいませんか」という男性はいっぱいいるのであるが、「誰か紹介して」という女友だちがまわりに本当にいないのだ。


夕食時に彼からの連絡を受けとり、ふと顔を上げると目の前に色が抜けるように白く、ヘーゼルの瞳を持つ美女がいるではないか。そう、近所に住んでいるMちゃんだ。彼女はヘアメイクをしているのであるが、自分がモデルになっていいぐらいのすごい美人。女優の橋本環奈ちゃんにそっくりな顔立ちどおり、キュートで聡明な女性である。さっそくMちゃんの写真をとって、送ったところ「僕にチャンスをください!」と大喜びである。


Mちゃんも会ってもいいということなのでレストランを予約した。彼はMちゃんと食事をし、大満足だったようである。おとといMちゃんに会ったら、毎日のように連絡がくるという。彼女も礼儀として返しているそうだ。

「どうなの?気に入っているの」と尋ねたところ、「とてもいい人だと思いますが、ひと目会って、心がわくわくするようなところはありません」とあっさりとした返事。

「この仕事が大好きだし、ずーっとやっていくつもりなんです。だから仕事やめてまで今すぐどうの、なんていう気はまるでないんです」

まあ、Mちゃんのこういうところが私は好きなのであるが。


「友だちに話したら、独身の医者なんてめったに知り合えないよ。いいじゃないって言うんですけど、相手が医者っていうだけで、その人を受け入れて、五十年も人生共にできる女の人ってこの世にいるのでしょうか」重たい質問をつきつけてくるMちゃん。

確かにまわりを見渡しても、最近こんな女性は存在しない。


今日びの女性に「どんな人と結婚したいの」と質問したところ、「好きな人」との答えが即座に返ってきて、「好きな人」という言葉の前で「エリート」だ、「パートナー」だなどという言葉は薄れてしまう。好きな人と寝起きを共にし、好きな人と思う存分おしゃべりをする。これが結婚の原点なような気がして仕方ない。


今、ハイスペックだからといって珍重する女性などめったに見ることはない。バリバリ働いている女性が多いので、「ああいう人と結婚するとめんどくさそう」という空気が強いのである。今は同僚とか自分が仕事しやすい人が多い。つらい仕事を終えた後、こちらの方でほんの少し心をゆるめて見せる。するとそれに反応して心をゆるやかにラクチンにしてくれる好きな人。しかしこの「好きな人」があらわれないから、女性たちは悩み苦しんでいるのだ。


エリートというだけで、その男性を愛せて結婚できるのも、一種の才能かもしれないとつくづく思う私であるが、働いている女性だと、こっちの方の才能はどんどん希薄になっていくようだ。

結局パートナーと愛する男性の間で、これからも女性は揺れ動くに違いなく、だからこそ結婚の論議は続くのである。

みんなが幸せについて真剣に考えている。私も協力します。自粛中に身のまわりを整理したという人はいっぱいいるが、愛だけは断捨離してはいけない。





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