美しさのまとい方 ママの脳②

【赤ん坊が快楽回路をハイジャック】

多くの母親は赤ん坊に対する気持ちを表現するのに「恋する」という言葉を使う。当然かもしれないが、脳の画像で調べてみると母性愛は恋愛によく似ている。

どちらの愛の場合も脳でドーパミンとオキシトシンが高まって絆をつくりあげ、批判的な思考と否定的な感情が働かなくなり、高揚感と愛着を生みだす快楽回路のスイッチが入る。通常は他人に対する否定的批判的判断を可能にする脳の部分、たとえば前帯状皮質が愛する者を見てるときには働かないことが研究で分かっている。オキシトシン回路の優しい慈しみの反応は、快感と報酬の物質ドーパミンの急増で生じる快感によってさらに強化される。これは親密なコミュニケーションとオーガズムで発火するのと同じ女性の脳の報酬回路である。


【授乳とぼんやり脳】

わが子への手のつけられないほどの恋心は、母親にとってはまもなく常態となり、日々強化されていく。赤ん坊と一緒にいる時間が長くなればなるほど絆も強くなる。授乳も絆を強くする効果がある。


赤ん坊を母乳で育てている女性たちは脳の中でも最大の快感を定期的に刺激されるのだ。研究では、押せばコカインが出てくるバーと、子に乳首を吸わせるバーを用意して、母ラットに選ばせたところ、脳にあふれるオキシトシンのほうが完全にコカインに勝つという結果になった。これからも授乳がどれほど母性本能を再強化しつづけるか想像がつく。

それに赤ん坊も報酬を共有している。オキシトシンは母親の胸の血管を広げて乳を飲む子をあたためるし、子どもも母乳に含まれる快感物質を受けとる。飲んだ母乳で赤ん坊の胃が広がると、赤ん坊の脳でもオキシトシンが放出される。ただ空腹が満たされるだけでなく、その赤ん坊の気持ちをなだめて安らかな気持ちにさせる、リラックス効果が生じるのである。


しかし、どんな利益にも代償はつきもので、授乳には精神的な集中力の鈍化というマイナスがともなう。出産直後に頭がぼんやりすることはごくふつうだが、授乳によってこのとろりとして穏やかな焦点が定まらない状態がひどくなり、長期化することがある。的をしぼって集中する働きをする脳の部分は、出産後半年くらいは子どもを見守り保護することに占領されてしまう。


【よいママの脳は連鎖する】

優しくて子育て熱心な母親の話もあれば、その裏返しもよくある話だ。どんな理由であれ、母親が適切な育児ができなかったり、赤ん坊とのつながりが薄いと、子どもの信頼と安心の回路に否定的な影響が及ぶ場合がある。しかも女性が母親から受け継いだ育児行動は、よかれ悪しかれ娘から孫娘へと伝えられる。

行動は遺伝しないが、最近の研究によれば、ママの育児能力は科学者の言うところの「非ゲノム的」、あるいは「後成的」な方法で、つまり遺伝子以外の物質的変化によって受け継がれるという。


育児熱心な母親から生まれたメスのラットが育児に不熱心な母親に育てられると、遺伝的な母親ではなく育ての母親と似た行動をとることが研究でわかっている。実際に子のラットの脳はどれだけの慈しみを受けたかで変化する。メスの子の脳でいちばん変化したのは、エストロゲンとオキシトシンを使う扁桃のような回路だった。これらの変化は、このメスが次世代の子を育てる能力に直接影響する。ママの脳は模倣ではなく、構造を通じてつくりあげられるのだ。育児に不熱心な母親の行動は、思春期以前の環境でよい変化が起こらない限り、三世代にわたって受け継がれていく可能性がある。


この性質の一部でも人間にあてはまるとすれば、その意味は非常に大きい。母親が娘をどう育てたかが、娘が孫をどう育てるかを決定することになるからだ。また誰でもいいから、愛情があって信頼される大人による質の高い育児は、頭がよくて健康で、ストレス処理能力が高い子どもを育てることが研究で明らかになっている。このような資質は生涯を通じて保持されるし、さらにその子どもたちの人生にも引き継がれる。母親代わりの人の特別な配慮は、それが十分に与えられさえすれば、母親の育児の不十分さを補うことができる。





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