美容の皮膚科学 角質層
皮膚の潤いがあることは、美しい肌の一つの条件である。潤いがないと皮膚の表面はカサカサしてくる。皮膚に潤いを与えるのは、その表面にある皮脂膜と角質層の保湿因子である。
<角質層>
角層(角質層)は0.02㎜の薄さである。美容上皮膚が美しいとか、そうでないとかいっているのは、この表面の角層をみてのことである。それだけに角層を整えておくことは美容上最も大切なことである。
角層は角質細胞からできている。細胞といってもこれは核がない。そのため一種の死んだ細胞ということである。なぜこういった死んだ細胞の層が体の周りをとりまいているかというと、外界から絶えず受けている刺激から体を保護するためには生きた細胞では刺激に耐えられないからである。
角層は外界から絶えず物理的な刺激を受けていると(例えば労働者の手をみるように)その部分の角層は厚くなってくる。また人間は立って歩き、手で色々なものを握って仕事をしている。そのため、手のひら、足の裏では生まれつき角層が厚くなっている。しかしこのように角層が厚くなってくるのは、外力によるものだけではない。日光にあたって日焼けしたときでも同じである。慢性的な日光曝露を受けて光老化した皮膚は肥厚し、角層も厚くなる。角層が厚くなると光線にあたっても散乱させて、真皮乳頭(皮膚の表面に向かって真皮が突出している部分)にまで届く光線が少なくなって、サンバーン(日光によるやけど)を目立たせないですむ。つまり日焼けの予防になるのである。
<角質層の働き>
①保湿機能
油とともに角層に必要なことは、それが一定の水分を含んでいることである。角層の水分量が低下しているものを乾性の皮膚という。皮膚の張りや柔らかさにも関係する角層の理想の水分量は15~20%で、外界の湿度に左右されやすい。外界の湿度が高いときは角層の水分量は増加し、反対に乾燥していると水分量は少なくなってカサカサしてくる。しかし、それがどうして乾いた空気の中でもパリパリになるまで乾いたりしないのかというと、それは角層自身が保湿機構を備えているためである。ひとつひとつの角質細胞をレンガに例えると、積み重なったレンガの間にはすき間があり、それを保湿因子である細胞間脂質が埋めて細胞同士をくっつける役目をしている。そのため、角層の水分が蒸発して外に出て行きにくい仕組みになっている。また細胞間脂質は水分と結合して水分を内部にとどめている。さらに、角質細胞の中にあるアミノ酸などの天然保湿因子(NMF)も水分を吸着する性質が強く、これらも大切な保湿因子である。
②バリア機能
細胞間脂質や天然保湿因子(NMF)による角層の水分保持機構は、バリアとしても重要な働きをしている。正常な皮膚では分子量1,000以上の物質は角層を通り抜けて入ることはできないが、角層のバリアが不十分だと安易に侵入する。つまり吸収される。例えば、アトピー性皮膚炎の人の皮膚は細胞間脂質が不十分なことが多く、そのため皮膚が乾性に傾くだけでなく、ちょっとした刺激に反応して湿疹が悪化しやすい。また、ピーリングなどで角層を剥がしたときや入浴などで角層がふやけているときは、角層バリアが一時的に壊れた状態になる。
発汗がみられなくても、表皮からはごくわずかずつ水分が失われている。皮膚表面から空気中へ水分が蒸散することを経表皮水分喪失(TWL)といい、角層バリア機能の指標部分となる。すなわち、正常な角層をもつ部分ではTWLは低くなり、バリア機能の低下している部分のTWLは高くなる。一般的に年齢が高くなるほどTWLも高くなる傾向にある。
<スキンケア>
①内側からの手当
基底細胞の分裂によって産生された角化細胞(ケラチノサイト)は、基底細胞から顆粒細胞までは中心に核をもっている。それが角質細胞になるとき無核のものに変わり、細胞は死ぬ。この角化細胞が角質細胞に成熟し変化する現象を角化と呼んでいる。また、この細胞は形を変えながら角層へと押し上がられていき、最後に角片として剥がれ落ちる。この新陳代謝をターンオーバーといっている。これが順調に行われてないと、角質細胞に核が現れ(不全角化)角層が厚くなってくる。角層肥厚した皮膚は保湿能が低下し、皮膚表面がざらついて肌理を粗くする。また角層にある細胞間脂質と天然保湿因子は角化の過程でつくられる。
正常なターンオーバーを行う手当にはビタミンAが使われる。ビタミンAが不足すると角化が不完全になり角層が厚くなって乾性の皮膚に傾く。
ビタミンAは肝臓に貯蔵される。肝臓の働きが健全である限り1年間ビタミンAを摂らなくてもビタミン欠乏を招くことはない。反対に肝臓の働きが悪いと貯蔵能力が悪くなるためにビタミン欠乏症が起こる。美容上大切な点は、肝臓の働きが悪くなると皮膚が日光に敏感になってくることである。そのため皮膚が荒れてきたり、紅くなってほてってくる。その他シミやシワも発現する。また体の中の余分な女性ホルモンは肝臓で解毒される。そのため肝臓の働きが悪くなると女性ホルモン過剰を招き婦人科系疾患のリスクが高まる。
②外側からの手当
かつて乾性の皮膚の原因は皮脂分泌が少ないためとされていたが、現在ではむしろ角層保湿機構の主役は細胞間脂質であることが立証されている。乾性に傾きバリア機能が低下した皮膚には細胞間脂質の構成成分の約半分を占めているセラミドを塗布すればよい。セラミドは外界の湿度に左右されにくい。脂質でありながら親水基を持っているため、水にも油にもよく溶けるのが特徴である。加齢に伴うセラミドの量的、質的変化は様々な報告があり十分定まっていない。
表示成分名はセラミド1、2とセラミドの後に数字がついており、数字によって機能が違ってくる。
セラミド1/水分保持の働きがあり、外部の刺激を防ぐ優れたバリア機能を持っている。
セラミド2/保湿力が強く、バリア機能を高める。毛髪にも多く、人間の皮膚に最も多く含まれている。
セラミド3/水分を保持し、シワを抑制、減少させる。
セラミド4・5/角質の脂質バリア層をつくり、保持する。
セラミド6・6II/水分を保持し、シワを抑制、減少させる。正常な皮膚のターンオーバーを促す。
セラミド7/細胞の増殖分化をコントロールし、皮膚にある菌のバランスを整える。
角質細胞の大きさは表皮のターンオーバーを反映している。ターンオーバーが遅い場合は角質細胞のサイズが大きくなり、早い場合は小さくなる。加齢に伴い角質細胞のサイズが大きくなることが報告されており、これは加齢に伴い表皮のターンオーバーが遅くなることを反映している。
こちらは肥厚した角層を取り除きターンオーバーを促す働きがあるディープクレンザー
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