美しさのまとい方 月経関連障害
【月経関連疾患と就業の相互関係からみた女性のメンタルヘルス】
月経を経験する性成熟期は、女性にとって濃密な社会との関わりの中でアイデンティティの確立と長期的な人間関係構築の時期である。
一方で、妊娠、出産、子育て、介護など、役割をいくつも同時に果たす時期でもある。現代社会の「女性」のありように関する通念から、就業女性は仕事と家庭の責任の狭間で苦悩することがある。
就業に関するストレスは心身相関による月経関連疾患の要因となりやすい。また月経時の心身不調は予期しない就業効率の低下を招き、勤務体制に影響することもある。
このことは周囲との人間関係構築の困難さにも繋がり、それをストレスと感じると疾患が悪化し、そこに悪循環が成立する。
【正常な月経とは】
単純にいう、月経とは妊娠するためにある。女性の身体では、視床下部から分泌されるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)によって、下垂体前葉のゴナドトロピンである卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)を放出するよう働きかけ、それらによって卵巣で卵の成熟と排卵を起こす。また同時に、卵巣からの卵胞ホルモン(E)と黄体ホルモン(P)が周期的に働き、受精卵着床のための子宮内膜の肥厚を促す。妊娠が成立しなければ内膜は剥がれ落ちる。これが月経である。
月経の周期(月経の開始日から次の月経が始まる前日まで)は25日以上38日以内、月経持続期間は3日以上7日以内が正常とされている。
【疾患概念】
月経困難症
産婦人科用語集には、月経困難症は、「月経期間中に月経に随伴して起きる病的症状をいう」とある。月経痛のほか頭痛、嘔気・嘔吐、脱力感、易疲労感のような身体症状や焦燥感や気力減退などの精神症状もみられる。症状発現が頻回になれば通常の行動パターンが守れなくなる。
女性の下腹部痛に関しては14.7%が慢性骨盤疼痛性障害であったと報告されている。そのために失職する場合もあり、また疼痛のためにその45%が仕事に支障をきたしていたと報じられている。性成熟期女性の70~80%が月経痛を示し、日常生活や仕事への支障が推定される要治療比率は3~8%とされる。
月経前症候群
産婦人科用語集では、「月経前の3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するもの」と月経関連障害の月経前症候群(PMS)を定義している。どのような症状でもよいし、どんな症状も発現すると思ってよい。
精神障害としてあるのは月経前不快気分障害(PMDD)であり、日常生活に比較的影響を及ぼす全身症状に加えて精神症状を示すことが特徴である。PTSDや適応障害、パーソナリティ障害などの合併率が高いために、多くの診療科のコンサルテーション・リエゾンを要する。PMSは性成熟期女性の約半数にみられるとされるが、PMDDは性成熟期女性の0.48%の比率である。
【ストレスと月経困難症】
ストレス時の分泌経路である視床下部-下垂体-副腎皮質ストレス反応系(HPA)と、毎週期に働いているホルモンの分泌経路である視床下部-下垂体-性腺系(HPG)では、どちらもその中心的な役割は視床下部-下垂体にある。ゴロドトロピン放出ホルモン(GnRH)ニューロンにはストレス応答と関連する副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)受容体やバソプレシン受容体などの神経ペプチド受容体が発現しており、ストレスが性機能発現を抑制する可能性も示唆されている。
月経異常を起こす女性の主なストレスには、以下にあげるようなものがある。
①精神的なストレス
学校や職場での人間関係に問題がある。進学や受験、責任ある仕事を任されるなど周囲の環境の変化によって精神的なストレスを受ける。
②無理なダイエット
急激なダイエット、ダイエットをきっかけにした摂食障害などの場合も月経異常が起こることが多い。
③生活習慣の乱れ
夜更かしによる慢性の睡眠不足や不規則な生活パターンによる日中リズムの崩れ、過度に甘いものを食べるなどの食生活の偏りは肉体的にも精神的にも大きなストレスである。
④過度の運動
女性アスリートによくみられるように、急激な激しい運動、あるいは長期間に過度の運動を続けると、ホルモンの正常な分泌リズムが崩される。
次回「月経関連障害の治療」続きあります。
0コメント