美しさのまとい方 女性ホルモン
【女性ホルモンの働き】
女性ホルモンには、主に卵巣の卵胞から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)と、黄体から分泌される黄体ホルモン(プロゲスチン)の二種類がある。
エストロゲンとは・・・
エストロゲンは卵胞ホルモンの総称で、エストロン、エストラジオール、エストリオールの三種類のステロイドホルモンを指している。いずれもエストロゲン受容体との結合能を有するが、産生量はエストラジオールが最も多い。
体内で活性が高いのはエストラジオールであり、それに次いでエストロンである。これらは、細胞から分泌された後に相互に転換し合う。臨床的にエストロゲンといえば、この二つのうちのいずれかである。
妊娠中に優位となるエストロゲンはエストリオールで、非妊時にはほとんど存在しない。
卵巣でつくられたエストロゲンは血液中に移行して全身に作用する。思春期には女性らしい体型をつくり、月経を起こし、子宮、腟、乳房などの発育を促す。また、脳、血管、消化管、骨、筋肉、脂肪細胞、皮膚など多くの組織においては局所的に産生され、主に産生された局所に限定して作用している。
なお、男性にもエストロゲンは存在している。男性では血中にあるエストロゲンの約80%は、精巣でつくられる代表的な男性ホルモンであるテストステロンが、脂肪組織や筋肉でエストロゲンに転換されたものである。残りは精巣でつくられて血中に放出される。
プロゲスチンとは・・・
プロゲスチンは黄体ホルモンの総称で、プロゲステロンが主要な黄体ホルモンである。コレステロールからつくられる黄体ホルモンは主に生殖に関係することから性ステロイドホルモンとよばれている。
子宮を妊娠できるように準備させ、月経周期を決めて、もし妊娠が起こった場合には出産までの間、妊娠を維持させる役目を果たす。
視床下部-下垂体-性腺(HPG)軸
脳の深部にある視床下部の視索前野と弓状核からゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)放出ホルモン(GnRH)が分泌される。このコナドトロピン放出ホルモン(GnRH)によって、生殖中枢から卵巣に直接働きかける物質(ホルモン)であるコナドトロピンが脳下垂体でつくられ分泌される。コナドトロピンには二種類ある。一つは卵胞刺激ホルモン(FSH)、もうひとつは黄体形成ホルモン(LH)である。両者とも卵巣に働いて女性ホルモン(エストロゲンとプロゲスチン)をそれぞれ分泌する。
♦視索前野・・・脳の視床下部に存在し、体温を維持・調節をする。
♦弓状核・・・脳の視床下部に存在し、空腹および低血糖状態を感知して摂食調節をする。
♦脳下垂体・・・目の奥に存在し脳から垂れ下がっているような位置にある。甲状腺や副腎などの多くの内分泌系の機能コントロールセンターでもあるが、生殖系の中枢である。
【ネガティブとポジティブ】
月経開始後、脳下垂体からFSHの分泌が亢進し、卵胞が発育を始める。卵胞がある程度発育すると、そこからエストロゲンが分泌されるようになる。エストロゲン値が上昇するとその反動でFSHやLHの分泌はやや低下する。これをエストロゲンのネガティブフィードバック作用という。
排卵直前はエストロゲン濃度が増加するため、視床下部からのGnRH分泌様式が変化し、同時に脳下垂体におけるコナドトロピンのGnRHに対する感受性が増加する。その結果、FSH、LHともに急激に分泌量が増える。この現象をエストロゲンのポジティブフィードバック作用という。
このようにエストロゲンの分泌はコナドトロピンによりもたらせるが、逆にエストロゲンはコナドトロピンの分泌を抑制する役割を果たしている。エストロゲンが生殖中枢(具体的にはコナドトロピン分泌)に対して促進的に作用するか、抑制的に作用するのかは、生殖中枢の状態により異なる。
【ストレスと女性ホルモンの分泌】
女性ホルモンの分泌が乱れると、月経不順とともに、さまざまな体と心の不調をきたす。乱れを引き起こす原因として、ストレスや不規則な生活、睡眠不足、過度なダイエット、更年期などがあり、女性を取り巻く環境には、ホルモンバランスの崩れを招く要因がたくさんある。なかでも、ストレスは最も重要な要因である。
視床下部はストレス反応の起点となるため、視床下部からのGnRHの分泌も大きな影響を受ける。ストレスと感じると視床下部-下垂体-性腺(HPG)軸は抑制され、適切なホルモン分泌の指令が出せない状態になる。このため、ストレスが慢性化すると女性ホルモンの分泌のみならず、生殖器官そのものにも影響を与えるようになる。 一方、女性ホルモン自身はストレスを和らげる作用ももっている。
このように、ストレスは女性ホルモンの分泌に影響を与え、女性ホルモンはストレス反応に影響を与える仕組みが存在する。
【家庭環境と思春期早発症】
近年、子供が受けるさまざまなトラウマやストレスが生殖機能の成熟を早めるという学説が注目されている。両親の不和や離婚など、子供にとってつらい経験が思春期の発来を早め、初経の低齢化をもたらすというデーターがある。一方、両親の温かい庇護のもとに安定した家庭環境で育った女児の思春期の発来は、遅れる傾向があるということがいわれている。
ここで特筆すべきことは、思春期前の社会的、家庭環境が良好か否かによって思春期発来のタイミングやその速度が影響されるのは女児であり、男児では明らかでないということである。
注目すべきことは、母親の不在は女児の性成熟には影響せず、父親が不在で、かつ継父と同居している場合に初経年齢が早まるという報告が挙げられる。父親が不在であること自体が子供にとってストレスであり、そのことが性早熟を早める因子となる。
思春期早発症の女性は早い時期に身長が伸び、初経後は伸びが鈍化、停止するために、結果として標準的な身長に達しないことが多い。
また初経の低齢化は免疫が関連する代表的な疾患である気管支喘息、関節リュウマチ、全身性エリテマトーデスなどのリスク因子となりうることが、いくつかの疫学調査で認められている。
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