美しさのまとい方 勤労と婦人科疾患

子宮の内腔は子宮内膜という組織に覆われており、そこに受精卵が付着して着床発育することで妊娠が成立する。また妊娠が起こらないと、月々に子宮内膜ははがれ、血液とともに膣から体外に排出されるのが月経である。


【子宮内膜症】

本来子宮の内側にしか存在しない子宮内膜とよく似た組織が、骨盤内に発生し増殖する状態を子宮内膜症という。特にできやすい場所として、卵巣、卵管、子宮と直腸の間(ダグラス窩)、膀胱壁、大腸や小腸、腹膜などである。なお、卵巣に発生するものは、卵巣の中に血液が貯留し卵巣が大きくなる。これを子宮内膜症性嚢胞という。良性疾患ではあるが、子宮内膜症嚢胞は0.5%程度卵巣がんに転化することもある。


子宮内膜症で問題となるのは、激しい月経痛や月経時以外にも慢性的な下腹部痛がある。また、排便痛、性交痛などを伴うこともある。さらに子宮内膜症があると、子どもができにくくなる。このように、子宮内膜症は女性にとって大変悩ましい病気であり、約10人に1人が罹患している。

子宮内膜症は卵巣機能が正常で、月経が規則的にみられる女性に多く、過去において中断されることなく規則的な月経を経験した期間が長いほど発症リスクが高まる。

したがって初経が早く、初経以降長い間子どもを産まないと発症リスクが高まる。現代女性によくあてはまる初経年齢の低年齢化、結婚や出産年齢の上昇、少子化、未婚女性の増加などは、まさに子宮内膜症を増やす要因となっている。


【子宮内膜症と仕事】

働いている女性に子宮内膜症が多いということはない。ただ、仕事を継続している女性はもっぱら家事を担っている女性と比較して未婚率が高く、既婚であっても子どもの数が少ない傾向がある。そのため子宮内膜症の発症リスクは高くなる。


仕事に伴うストレスと子宮内膜症との間に関連があるだろうか。

ストレスが一定のレベルを超えると、増悪、改善の両様に影響する可能性がある。つまり中度のストレスは、子宮内膜症に付随する痛みを増強する。一方、卵巣機能が低下する程度の高度なストレスがあると、子宮内膜症の発生や進行は抑えられる。しかし、卵巣機能の低下は別な意味で好ましくない影響を及ぼすものであり、いずれにせよ過度のストレスは避けるべきである。


【子宮内膜症と不妊】

子宮内膜症は子どもを産まない、あるいは不妊の女性に発生しやすいが、いったん発生すると二次的に不妊の原因となる。つまり、子どもを産まない状態が長続くと子宮内膜症になりやすく、逆に子宮内膜症になると子どもができにくくなる。なお、子宮内膜症は妊娠・出産により病変が縮小または消失する。35歳を過ぎて子宮内膜症がある不妊女性は、自然に子どものできる確率は低く、標準的な不妊治療も効果が低い。そのため、体外受精などの高度な不妊治療に頼らざるを得ない。


【子宮筋腫】

子宮のほとんどは、平滑筋という筋肉で構成されている。そこからでる良性腫瘍が子宮筋腫である。発生頻度は極めて高く、30歳以降の女性の3人に1人程度といわれている。小さな子宮筋腫まで含めると50%以上の女性に子宮筋腫がみられ、子宮摘出手術の理由として子宮筋腫が最も多い。


子宮筋腫は、子宮の外側に発育するもの(漿膜下筋腫)、子宮の内側に飛び出すもの(粘膜下筋腫)、子宮の壁の中に発育するもの(筋層内筋腫)などがある。症状は発生部位により異なり、無症状であることもまれではない。

子宮筋腫が発育して子宮が全体として大きくなると、おなかの上からでこぼこした硬いものを触れる、あるいは下腹部が膨れてくる。おなかの上から触れるようだと、かなり成長した子宮筋腫ということになる。また、子宮の前方にある膀胱を圧迫するような大きさになると、膀胱の容量が小さくなり、頻尿となる。


粘膜下筋腫や筋層内筋種などで子宮の内側(子宮内膜という組織が覆っており、これが出血をともなってはがれるのが月経である)の表面積が拡張すると月経の量が増え(過多月経)、貧血の原因となる。なお、規則的に月経がある女性にみられる貧血の原因の95%以上は、子宮筋腫などの婦人科疾患によるための過多月経である。特に、粘膜下筋腫は小さいものでも過多月経を起こしやすく、しかも月経が長引く原因となる。さらに、発育した腫瘍が変性(なかで出血が起こったり、酸素不足となることで腫瘍組織が壊死に陥る)すると痛みが発生する。


子宮筋腫は、不妊や流産、早産の原因ともなる。特に粘膜下筋腫や筋層内筋腫によって子宮の内側(子宮の内腔)が変形するようだと不妊の原因となる。

子宮筋腫の発育には、エストロゲン(女性ホルモン)が必要であり、そのため思春期前や閉経後に発生することはない。

【子宮筋腫と仕事】

子宮筋腫は必ずしも勤労女性に多いわけではないが、子宮内膜症と同時に未婚または子どもを産まない、あるいは子どもが少ない女性に多くみられるため、働いている女性では特に頻度が高くなる。

したがって子どもをつくらないで働き続けてる女性にとって、子宮筋腫ができていないかは大変気がかりなことである。では当分の間結婚、妊娠の予定がない勤労女性が、子宮筋腫のリスクを減らすことは可能だろうか。


子宮筋腫は肥満女性に比較的多く、体重を適正に維持することは予防効果があるだろう。また、経口避妊薬(低用量ピル)を10年間服用すると、リスクは30%低下する。ただし、子宮筋腫のリスクを減らす目的のみで経口避妊薬を使用することは勧められていない。


子宮筋腫があることで困ることは月経の量が多い、あるいは月経が10日間以上も続くいったことである。このため仕事を休むか、仕事の量を減らさざるを得なくなる。また、貧血のため通勤や体を動かす仕事がきつくなるといったこともある。このような症状があれば、治療が必要となる。


治療に関しては、一時的には(半年間程度)ホルモン療法で症状を抑えることができるが、治療の基本は手術療法である。将来子どもが欲しい女性では子宮筋腫にのみ切除し、子宮を残す手術が選択される。ただし子宮筋腫はエストロゲンがなくなると縮小するので、閉経を迎えてしまえば問題となることはほぼない。そのため50歳に近づいている女性では手術の決断に関しては慎重を要する。




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