モテ女の身の上
私の周りには私を″もっと″いい女にしてあげたいと思う方々は実に多い。
とうにお話した友人、虜にした男性は数知れないという根っからの″モテ女″の彼女もその一人である。(以前ブログに登場した女性です)
その彼女と久しぶりに会うことになった。このところスミレさんと寝食を共にし色気をしみ込ませるためあまりにも忙しくて、ちょっとご無沙汰していたのだ。
「あれ、恵美子さん雰囲気が変わりましたね」さすがわが友よ、彼女はすごくこういう機微に敏感なのだ。
「えー、そうかしら」私は長い髪を揺すって首を横に振った。なんと美女にしか許されざるしぐさを私はやってのけたのである。
「はい、臭いが違います」彼女の目が光った。
ついに私からもそこはかとない大人の色気が漂っている、、、みたい。これからは私のプロフィールにこの「色気がある」っていうフレーズを入れないとね。そう、そう名刺にも刷っておこうかしら。が、私のその考えはすぐに打ち砕かれる。
「色気のボリュームを間違えないでくださいね、エロいって普通ってことですからね」彼女はいみじくも言った。
なるほどなあと思った。普通であることは色気があるということだ。そして色気が増すとそれに比例するかのように生活臭がつきまとう。ここまでくるとなんかいろいろ下品な印象は免れない。
ただでさえ正真正銘の普通の人間なのに、これ以上普通っぽいアイテムを増やしたくない。
私の望んでいるのはそういうものではない。洗練された色気だ。うんと神秘的で、ゆえにちょっぴり排他的なものなのだ。美女といるといつも真実をつかむ私である。
「これ、お土産です」彼女は紙袋を差し出した。
男性と旅行へ行っていたようだ。土産話から彼が彼女のことを好きで好きでたまらないことがすぐに分かった。が、彼女はまるで知人の話のように話す。我を失うことがない。どこか心ここにあらずっていう感じで男性と付き合う。よってますます男の人は離れられなくなり男の人を狂わせる。それでいてその男性に実に尽くすっていうわけでもない。
普通の女性はモテる男の最後の女になりたいと願う。しかし彼女のようなモテる女は違う。モテる男はモテていてそれで構わない、我関せずとヘアスタイルを変えるように次々と現れる男性と恋をする。こういうことをしていたらますます女性としての魅力が磨かれていくはずだ。
「私、恵美子さんの彼氏、すっごく好みだけど友情の方をとりますね」と以前言われたことがある。百発百中を自負している人でなくては言えない言葉である。彼女にかかったら男の人をモノにするなんて、赤子の毛をひねるようなものであろう。
「話は変わりますが、最近ちょっと気になる人がいるんです」彼女は明るくはっきりと言った。
どうやら本日の恋の語らいはこちらがメインのようだ。しかも苗字を聞けばすぐにどこの御曹司とわかる方であった。
「その彼とはどこで出会ったの」私は吠えるように言った。
「スポーツジムです」そうか、VIPとの出会いはジムにあるのね。
私なんか完璧はじかれる、そのような世界は私と何の関係がありましょう、と思う人は多いであろう。しかし、さっそくそのスポーツジムの名前と住所を聞き出す私である。
「その人からパーティーに誘われているんですけど、一緒にいきませんか」
会場を聞いて少々ビビったものの、そこにこそ私の求めるとうとうと流れるドラマティックなものがあるような気して出席することにした。その日からつい美顔器を握る手にも力が入る私である。
彼女はすることなすこと、何といおうか男の人の心を掴むようになっている。突然はじけるように笑ったり、目をくるくると回したかと思うと、ちょっとしおらしく目を伏せて声や視線がねっとり艶をおびてくるのである。
そして刹那的につぶやくように言う。「私って熱しやすく冷めやすいタチなの、恋愛体質だからさ」このセリフが始まるとまわりの男性たちは目の色を変えるのだ。
彼女は男性との距離のとり方、接し方がバツグンに上手い。それはとりもなおさず洗練されている、ということなんだろう。美女としての威厳を保ちながら、誰とも気さくに接し、不機嫌になったりしない。そして一方でちゃんと男性を区別している。残酷なまでにだ。
自分の取り巻きの中に、社会的名声があり魅力的な男性たちを配置し、決して一回では仕留めない。相手の口説きを上手にかわしながらいろいろな駆け引きを楽しみ、そこから何かをキャッチしようとしているようだ。社会で頭ひとつ出ていく男性たちは有り余るエネルギーを持っている。女性の方もそれに呼応できるぐらいの情熱がなくてはならない。そして美貌と女の魅力という二大要素が必要で、しかもかなり賢く使わなくてはならない。
彼女といると、″女してる″っていう本能を目覚めさせられる。いろいろと女として大切なことを教えてもらう。隣に座った男性グループからのお酒のおごられ方、品のいい意地悪の仕方、そしてそれらの実践の場として宴席にもよく誘ってくれて、私を″いい女″へと導いてくれる。
「まあ、そのうちおいおいね」と彼女は私を励ましてくれる。しかしその″おいおい″が一向にやってこないのである(涙声)
今さら言うことでもないが、女性というのは欲張りなものである。競争率の低い男性との恋愛で本当に満足したことが今までにあるだろうか。
私は断言してもいい。男としての遺伝子が一本多い男の人から挑戦を受けたら、乗ってみるべきだ。そういう男の人たちというには恋の醍醐味を教えてくれるに違いない。そして彼にイヤな目にあわされ、かきまわされ、裏切られ泣いたりする。こういう経験をした女性というのはあきらかに恋愛の上級コースへと入っていく。男性に誠実さや、やさしさばかりを求めると初級コースで終わってしまう。そういうのは最後に選べばいい。挑戦を受けた女性は上級の学校に入学してその間、いろんなことを学んでいく。普通の女性よりも数倍も濃厚な時が過ぎていく。ひとつひとつ石を積むように勉強して彼らよりもっとしたたかで、モテる女になっていくのであろう。
誰もが欲しがる男性の愛を素直に受け入れられる女性というには、人生においてどれだけ幸福なことであろうか。
女性というのは、いったん恋をすると、心も体もとてもよく練れていく。一人の男性に耕された心は、次の男性をとても受け入れやすくなるぐらいまでやわらかくなっている。
よく次から次へと男の人が言い寄ってくる女性がいるが、あれは彼女の心がとても耕地になっていて男という種がやってきやすくなっているのだ。そしてそこにはキレイの種という副産物が生まれる。耕地はすごい勢いでキレイの種を育ててくれる。女性を飛躍的に美しくする。目はキラキラと輝き始め、肌は水を吸い上げたようになり、マッサージをしたかのように顔がいい筋肉の方向に引っ張られていく。そしてお腹周りの浮き輪はしぼんでいくのである。つまるところモテるとか、いい女になるというのはすべて循環なのである。
男の人にそういうまなざしで見てもらえる女性、現役感がある女性というのはそれだけで美しさに恵まれるのである。
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