美しさのまとい方 鉄欠乏性貧血
貧血は発熱や黄疸などと同様に微候の一つであり、その原因はさまざまである。
貧血の治療を行うには、まずはその原因を明らかにして正確な西洋医学的診断を得ることが必要であることはいうまでもない。
貧血の定義は日常臨床では、単位容積あたりのへモグロビン(Hb)またはヘマトクリット(Hct)、赤血球数の減少もしくは厳密には循環赤血球量の減少した状態である。
※ヘモグロビン(Hb)・・・赤血球に含まれる赤色素たんぱく質のこと。鉄(ヘム)とたんぱく質(グロビン)が結びついたもので、血液が赤い色をしているのはヘムが赤色素を持っているためである。
※ヘマトクリット(Hct)・・・ヘトマとは血液、クリットは分離を意味する。ヘトマクリット値は血液に占める赤血球の割合のこと。
※赤血球・・・血液細胞の一つで色は赤く、血液循環によって体中を回り、肺から得た酸素を取り込み、体の隅々の細胞に運び供給する役割を担う。また同時に二酸化炭素の排出も行う。
【鉄欠乏性貧血】
鉄欠乏による鉄欠乏性貧血は思春期から成熟期の女性に多いといわれている。月経や出産、ストレス、ダイエットなどが原因で生じやすい症状であり、肌の乾燥、爪や髪のトラブルを引き起こす。
食物の摂取により、鉄は1日あたり1~2mgが小腸上部で吸収される。健常人では一日にヘモグロビン合成に利用される鉄は25mgであり、ヘモグロビン合成に必要な鉄は大部分は貯蔵鉄から供給されていることがわかる。貯蔵鉄はヘモジデリンやフェリチンとして肝臓にある細胞内に蓄えられている。120日の寿命を終えた赤血球は脾臓のマクロファージによって処理される。
健常成人における体内総鉄量は3.0~4.0gで、血色素鉄が約2.5g、貯蔵鉄が1.0gである。よって、鉄供給の減少、細胞増殖の障害、出血などによる赤血球の損失または死滅の増加が鉄欠乏状態をきたす。
鉄動態は以下の通りである。消化管から吸収された鉄は血漿中のトランスフェリンと結合して、鉄トランスフェリン複合体となり、骨髄へ運ばれ、ヘム合成に利用される。ヘムは赤芽球細胞細胞質で合成されたグロビンと結合し、赤血球内のヘモグロビンに含まれ末梢血に放出される。一方、消化管・皮膚などの上皮細胞の脱落により、便中や尿・汗として1日に約1~2mgが失われる。
鉄欠乏性貧血は、B₁₂、葉酸、あるいは鉄の投与により貧血は治癒するとされている。鉄欠乏性貧血で鉄剤を投与する際、5%程度に悪心・嘔吐の副作用が現れるが、この場合は六君子湯(りっくんしとう)を併用することによって副作用を軽減できることが報告されている。六君子湯に何らかの鉄の有効利用を促進させる作用があること、その食欲改善効果、消化管運動促進による鉄吸収および利用の改善が推察される。
※マクロファージ・・・白血球の一種。食細胞で死んだ細胞やその破片、体内に生じた変性物質や侵入した細菌などの異物を捕食して消化し、清掃屋の役割を果たす。
【東洋医学からみた貧血】
東洋医学的には、貧血は「血」の異常のひとつである、「血虚」(けっきょ)ととらえられる。「血虚」は「血液の量が不足している」、「血液に栄養が不足している」という貧血そのものの意味をもっている。貧血は身体の栄養分である「血」が不足した状態で同時に全身のエネルギーも不足している状態である。
「血虚」の原因としては、消化器の働きが悪く、食べ物を消化吸収できず、「血」をつくり出せない場合や、激しい運動、パソコンやスマートフォンの使用による目の使い過ぎ、精神不安、夜更かしなどの生活により、「血」を激しく消耗したなどが挙げられる。
♦健脾作用(消化器の働きを高めて消化吸収をよくする)の食材・食薬
インディカ米、うるち米、米麴、ひえ、いんげん豆、なつめ、そら豆、ナス、ニンニクの芽、ふくろだけ、山伏茸、れんこん、アンチョビー、かたくちいわし、とびうお、牛肉、熊の手、醤油、豆板醬、みりん
♦補血作用(栄養を補う)の食材・食材
黒豆、黒胡麻、枝豆、金針菜、よもぎ、赤貝、あさり、穴子、いわし、うなぎ、すずき、たら、ぶり、鯨肉、鶏のレバー、豚肉、豚足、烏骨鶏の卵、鶏卵、クコの実、ナツメ、プルーン、オイスターソース
※食薬・・・食材でありながら生薬として効能をもっているもの
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